(2022年4月19日、京都新聞山城版「地域×健康」に掲載されたコラムです。)
がん検診について
医療法人社団右橋医院 右橋 龍爾
一生のうちにがんにかかる人は男性65%、女性50%(2018年)で、1975年から2015年では約4.5倍になっています。「がんはすごく増えている」と思われがちですが、高齢化による年齢構成の違いを調整した罹患率は1985年以降増加または横ばいであり、同様にがんの死亡率も1990年代後半から減少しています。がんが増えている要因は高齢化なのです。
罹患率はがん検診にも左右されます。血液検査による前立腺がん検診が普及したことにより、前立腺がんの罹患率は2000年以降急激に増加しています。しかし検診普及以前1965~1979年のデータでは、生前に前立腺がんの徴候がなく、死後の解剖により前立腺がんを認めた方は20.5%にもなります。これらをがん検診で発見したとしても、死亡率の減少には寄与しません。実際に罹患率が急激に増加したにもかかわらず、死亡率は横ばいからわずかな減少に留まっています。
罹患率は主として原因となる食事、喫煙、飲酒、運動、体格、感染症、化学物質などに左右されます。1975年の罹患率は男女ともに胃がんが1位でした。原因である塩分摂取量の減少やピロリ菌感染率の低下により、罹患率が減少したと思われます。
減少した胃がんにかわって増加しているのが、2018年の罹患率で男女合わせて1位の大腸がんです。便潜血検査による大腸がん検診は、受診者の身体的負担はほとんどありませんし、死亡率減少効果を示す十分な証拠があります。
しかし精密検査としての大腸内視鏡検査は身体的負担が大きく敬遠されがちです。要精密検査者のうち精密検査を受けた方は70%程度であり、80%以上ある胃がん・肺がん・乳がんに比べて低くなっています。また日本は欧米に比べてがん検診の受診率が半分程度と言われ、大腸がん検診の受診率はわずか41.4%(2016年度)なのです。
最も多いがんである大腸がんによる死亡を減らすために、積極的に大腸がん検診を受診して、必要な場合には精密検査を受けるように心がけましょう。
(綴喜医師会)
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